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イラストの師匠

先日こんなイラストオーダーが入りました。

お気に入りのぬいぐるみの絵です。

CIMG2480.jpg元の写真がこちら。

ケーキの向こう側にある写真です。

CIMG2478.jpgのサムネール画像イラストオーダーの90%がアニメやキャラクターイラストです。

それらは元々影がついているので、そのまま真似れば立体的になります。

でも

写真をイラストに起こす場合は、写真をよく見て自分で影を作らなくてはなりません。

これが結構大変な作業なんですが、他店以上に気合いを入れる理由があります。

 

いつも写真イラストを描く時に頭に現れる人がいます。

昨年の今日、7月12日に亡くなった叔父の鈴野武志という人です。

叔父さんは中学校の美術の教諭を定年まで勤め、

「これ以上生徒に愛されている教諭はいないのではないか」と思えるほど

仁徳のある人でした。

 

そして叔父さんは僕の絵の原点であり、師匠です。

(もちろん僕が勝手に師匠と崇めているだけですが)

 

そんな叔父夫婦は僕が幼少の頃、同じ敷地の別棟に住んでいました。

叔父の家は美術の教諭らしく、部屋全体がアトリエのようで、

僕は置いてあるオブジェや画材、飾ってある絵が大好きで、

事あるごとに叔父の家に遊びに行っていたものです。

絵が好きになったのも、そんな環境があってのことだと思います。

 

僕は小さい頃から絵を描くと叔父さんの所へ行き

「ぼく、絵かいた!どう?どう?」と見せにいきました。

初めはただただ褒めてもらいたかっただけなのですが、

下手なのを自覚するうちに「どうやったら上手に描ける?」と、尋ねるようになりました。

 

その時に叔父さんがいつも言ってくれた言葉があります。

 

「甘いな」

「弱いな」

「良く見な」

 

おそらく、感想、アドバイスはこの3言に尽きたと思います。

 

初めは何のことか解らず苦しみましたが、そのうち

「甘いな」は、

 

描写が甘い

構図が甘い

タッチが甘い

描き込みが甘い

遠近感が甘い

「決め」が甘い(シャープなところがぼやけている)

仕上げが甘い

などであることに気づき、

 

「弱いな」は、

 

陰影が弱い

色合いが弱い

動きが弱い

質感が弱い

線が弱い

インパクトが弱い

などであることに気付きました。

 

そしてこれらに気づくため、

「良く見な」

と言ってくれたのでした。

要は、

「自分で気付かないと身に付かない」ということを教えてくれたんですね。

 

それから絵を描く時には、被写体をいろいろなセンサーを使って見、

それを紙面上にどう表現するかを考えるようになりました。

そして今はケーキの上で・・・

 

ケーキ屋を初めてイラストケーキをたくさん描くようになりましたが、

イラストを描く時はいつも頭に叔父さんが現れます。

「叔父さん、どうかな?」

「・・・甘いな」

「OK、ありがと」

 

イラストを描くのはもちろんお客様の笑顔の為ですが、

それと同時に僕に絵を与えてくれた叔父さんへの感謝と供養のため

これからもイラストを描くたび、心に「甘いな」とカツを入れられながら描くことでしょう。

そしていつかは

「少しはやるようになったじゃん」と

天国で言わせたいと思っています。

 

だからイラストケーキのイラストは、常に他以上に本気なんです。

 

叔父さんには最期まで御礼を言えませんでしたが、

心から、心から感謝しています。

 

「叔父さん、本当にありがとう。これからも頑張って描くから見ててね」

                                  伊織より

 

 

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